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【digitalnic】


強い日差しに黄色い砂浜は照らされている。
――そして海は荒かった。
電子世界の海はキメが荒い。
それがこの世界を現実のものではないと示している。
榊一樹は電子の海とそこに居る少女を見る度に
溜息が出る。
少女は体育座りのまま、一樹を見る事もなくただ
荒い電子の海を見ていた。
「イっちゃんまた来てくれたんだね」
喜んでるようで生返事のような曖昧な返し方を
する少女。
「どうして、振り返らないでわかったんだ、初夏」
「振り返らなくても分かるから」
寂しく憂いた声で鳴く彼女。
一樹はただ、何も言えず立ちすくす。
だから初夏は
「来てくれてありがとう」
とだけ言う。
その様子が儚げで切なくて一樹の心を痛めつける。
初夏は死んでいる。
では目の前にいる初夏は誰かといえば誰なのか。
それは一樹も答えられなかった。
それでも波の濤声だけは二人に届いていた。
この世界であっても電子生物が成長する事はできる。
初夏は事故を起こして、心肺停止したが初夏の脳は無傷ですぐにデータバンクに保存されたからこそ今の彼女がいる。
一樹としては、初夏と会える事は嬉しいがいつも初夏の浮かない顔を見て
何とも言えなくなる事を繰り返していた。
それでも一樹は電子の浜に足繁く通っていた。
ある日、初夏の様子が可笑しい事を一樹は感じていた。
「かーずきっ」
ここ最近の初夏ではない。活気に満ちた声。
まるで事故を起こす前の様。
一樹は昔のように初夏に接していた。
「もうね、悩まなくて済むんだ」
「そうか、寂しくなるな」
一樹から見える電子の海は涙のせいかいつものような粗さが無かった。
「違うよ。ずっと一緒にいる方法を思いついたんだよ」
「一緒? どういうことだ?」
「それはね、一樹も電子の人になればいいんだよ」
「そんなの、馬鹿げている。俺とお前は」
「私はずっと探してたんだよ。ずっといっぱいいっぱーい考えたの。
体育座りをしてね。そしたら管理機構にハッキングできたんだ。
電子の人間もやっぱり人間なんだよ。それで私がこの世界を
支配できるようになったんだ」
「皆を巻き込んでどうするんだ」
一樹は声を挙げて叫ぶ。
「……そうすればこの世界が現実なんだよ、だから大丈夫」
電子の世界は電子人間に整備されていった。
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クラスの時間

今日も清々しい空気が流れていく校庭。
私の気分、完璧な私、わたしわたしわたし……。
クラスに入れば三人の友達から名前を呼ばれ、
昼休みは、彼氏の祐也に昼ご飯を誘われ、
困ってる生徒が必ず1日1回は私に相談しにくる。
もちろん、完璧な私の科学力によってそれも答える。
全てが必然……だった。
帰り道、祐也は言った。
「お前、いつまでこれを続けるんだ」
「それはこれからもずっとだよ」
夕日がなぜか物悲しい。
「あのな、こっちの目をみて話せよ。
わかってるんだろ? これがいけないことくらい」
「……やだ。考えない、考えたくない」
私はどこかに駆け出していった。
――無数の可能性がある場所へと。

家に帰り、部屋の布団に入る。
今は寝逃げがしたい。
こんなことしてもどうにもならない。
白い天井を眺めるもそこに浮かぶのは、祐也の顔。
私は間違っていない、間違っていない、間違っているはずがない。
ケースに陳列されている成功結果の道具達を一覧すると、
私がしてきた事が思い出される。気分が益々曇り翳っていく。
そうだ、祐也も洗脳してしまえばいい。
これでクラス全員完全洗脳、全てが私の意のままに。
私は早速、洗脳器具を持って、祐也を呼び出す。
「私が悪かったわ、もうやめる」
そのメールを打つ手に迷いは無かった。
約束した場所に行くと祐也はすでにいた。
「伽耶、お前がクラスを可笑しくしたんだよな」
「ううん、そうじゃない」
わかってるわ、そんな事。
「元に戻せよ。お前はどうしてそんな風になっちまったんだ」
付き合ってて一番辛い事を言われたかもしれない。
「ごめん、ごめんなさい。祐也君」
私は抱きつきながら大粒の涙を出した。
「伽耶……」
祐也は私をそっと抱きしめた。
「ばいばい、祐也」
私は彼に器具を取り付けた。
囁かな風が流れ込んだ。
これでクラスメイトを制覇した。
誰も……何もわかってなかった。
私にこの器具は効果がない。
それは、自分自身が強い意思を持って行動してるから。
彼らの思考全てを私は奪ってはいない。
可笑しいって気づける筈だった。
だけど、彼らは皆、私に魅了されたまま。
あのクラスでは、私だけが時間が流れる。
たった一人の私の為だけに。




四角い箱

あるとき、男は四角い箱を手に入れた。
通電すると、その四角い箱は意思を持ち、こう言った。
「どうぞご自由にお使い下さいませ」
その通りに男は使いたいようにそれを使い始めた。
情報と名のつくものはそれがあればなんでも手に入った。
国の情勢、芸能人の裏情報、恋人を作る場所。
遠く離れていても人と会話もできる。
四角い箱は便利でそれさえあれば何もいらない。
そう考えた男は、ほぼ四角い箱だけを使う生活となった。
この話怖いじゃろ?
え? 実感がわかないって?
ああ、そうじゃった。
うっかりしておった。
君達の時代は、無機械時代じゃった。

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