クラスの時間

今日も清々しい空気が流れていく校庭。
私の気分、完璧な私、わたしわたしわたし……。
クラスに入れば三人の友達から名前を呼ばれ、
昼休みは、彼氏の祐也に昼ご飯を誘われ、
困ってる生徒が必ず1日1回は私に相談しにくる。
もちろん、完璧な私の科学力によってそれも答える。
全てが必然……だった。
帰り道、祐也は言った。
「お前、いつまでこれを続けるんだ」
「それはこれからもずっとだよ」
夕日がなぜか物悲しい。
「あのな、こっちの目をみて話せよ。
わかってるんだろ? これがいけないことくらい」
「……やだ。考えない、考えたくない」
私はどこかに駆け出していった。
――無数の可能性がある場所へと。

家に帰り、部屋の布団に入る。
今は寝逃げがしたい。
こんなことしてもどうにもならない。
白い天井を眺めるもそこに浮かぶのは、祐也の顔。
私は間違っていない、間違っていない、間違っているはずがない。
ケースに陳列されている成功結果の道具達を一覧すると、
私がしてきた事が思い出される。気分が益々曇り翳っていく。
そうだ、祐也も洗脳してしまえばいい。
これでクラス全員完全洗脳、全てが私の意のままに。
私は早速、洗脳器具を持って、祐也を呼び出す。
「私が悪かったわ、もうやめる」
そのメールを打つ手に迷いは無かった。
約束した場所に行くと祐也はすでにいた。
「伽耶、お前がクラスを可笑しくしたんだよな」
「ううん、そうじゃない」
わかってるわ、そんな事。
「元に戻せよ。お前はどうしてそんな風になっちまったんだ」
付き合ってて一番辛い事を言われたかもしれない。
「ごめん、ごめんなさい。祐也君」
私は抱きつきながら大粒の涙を出した。
「伽耶……」
祐也は私をそっと抱きしめた。
「ばいばい、祐也」
私は彼に器具を取り付けた。
囁かな風が流れ込んだ。
これでクラスメイトを制覇した。
誰も……何もわかってなかった。
私にこの器具は効果がない。
それは、自分自身が強い意思を持って行動してるから。
彼らの思考全てを私は奪ってはいない。
可笑しいって気づける筈だった。
だけど、彼らは皆、私に魅了されたまま。
あのクラスでは、私だけが時間が流れる。
たった一人の私の為だけに。




四角い箱

あるとき、男は四角い箱を手に入れた。
通電すると、その四角い箱は意思を持ち、こう言った。
「どうぞご自由にお使い下さいませ」
その通りに男は使いたいようにそれを使い始めた。
情報と名のつくものはそれがあればなんでも手に入った。
国の情勢、芸能人の裏情報、恋人を作る場所。
遠く離れていても人と会話もできる。
四角い箱は便利でそれさえあれば何もいらない。
そう考えた男は、ほぼ四角い箱だけを使う生活となった。
この話怖いじゃろ?
え? 実感がわかないって?
ああ、そうじゃった。
うっかりしておった。
君達の時代は、無機械時代じゃった。

衰星

私は彼らが歪に見えてならない。

そう、この地を這う生物達にだ。

進化、退化、成し遂げていく彼らの終着点は

終わる事を知らない。

始めのうちは、研究対象だった。

アメンボが水面を跳ねるのではなく、雲を跳ねるように、

それはつまり、小さな水蒸気の粒でさえも感知し跳ねているのだ。

人間の目では空を跳ねてるように見える。

私は今、この歪な生物が居る惑星の探索に来ているのだが

間違いなくこの惑星の虫達は進化が目まぐるしい。

昨日みたはずの蟻が微小になったかと思うと、私の靴を食べていた。

すぐに気づかなかったらもしかしたら私自身も食べられたかもしれない。

新調したはずの靴は、強化用の靴に変えなくてはならなくなった。

勿論、食いちぎられる心配はない、未開の地に向かう私たちにとって

これは必須だからだ、はっはっは。

危ないが面白い。素晴らしい成長だ。

かと思えば、蝶が蛹になり、幼体になる虫をみた。

これはどういう事か。

蝶は、私たちの蝶のイメージといえば、花にとまり蜜を吸うイメージだが

この世界に花はない。きっとこの退化はその悲しみなのかもしれない。

これら3つの生物種を見るだけでも、一体なぜこのような進化をしてきたか

わからない。

ここにいたらもしかして、私そのものも進化してしまうのではないだろうか。

トンボが飛来して、小さなトンボが空中で生まれる。

卵もなく生まれたトンボの小さいやつが飛ぶ。

樹木を啜る猿がいる。

滅茶苦茶なのだ。

いや、でも……これは。

そ、そうか、これは進化しているのでも

後退しているのでもない。

そうしているというのであらば

惑星そのものがそうなのだ。

彼らの共通点は「エサを求めている」という事。

エサそのものが見つからなければ探さなければならない。

彼らのエサは「無くなっている」という事。

そして他のエサを求めている。

でもそれがまた無くなれば?

それがまた無くなれば?

ありとあらゆるものが「無」に向かっている。

生態そのものが衰退している。

この惑星そのものが崩壊に向かって進んでいる。

私は今、恐れている。

私自身がこの惑星の虫に対して食欲を持っているからだ。

……。

宇宙人とそのカレシ

深夜だった。
今夜は嫌に静かだ。
普段なら、パパかママが寝たか確認しにきたり、
弟が添い寝を頼んできたり、やばい姉が
進撃してくる事もない。
だからこそ何か胸騒ぎがする。
何も根拠はないんだけど。
……背筋が寒い。
今日は冷え込むって言ってたっけ。
……いや……違う! 屋根がない!
私の部屋だけ屋根がない!
「え、なによこれ」
開いた口が塞がらない。
何なのかわからない。
私はもう夢を見てるのだろうか。
「いや、それは夢じゃないわ!」
それがどこからか聞こえる。
だけどどこを見ても誰もいない。
「ここよ」
なぜか、私の部屋に女の子はいた。
見た目は一七歳ぐらいの女の子と、
首輪に繋がった獣が一頭……?
「うわああああ」
本当に驚いた時ってこんな声出すんだと思いながら
大声で叫んでいた。
「失礼ね、私の彼氏に」
「か、彼氏! これどっからどうみても獣じゃん」
「……なによ、悪い?」
「しかも怖いよ?」
「なんかいった?」
彼女は私に向けて手を翳した。
それだけで私はなぜか小さくなった。
「な、なによこれ?」
「あら、あなたの前世は可愛い猫みたいね」
「こんなの嫌だよ! 早く元に戻して!」
「人の彼氏を獣呼ばわりした罰だわ」
「ごめん、だってあまりにも怖かったもん。」
「謝り方がなってないわ、
私の惑星は礼儀がなってない奴は打ち首よ」
「そ、それを言ったらあなたは不法侵入……」
「口が減らないわね。もう戻さないようにしようかしら」
「……ごめんなさい。次からもうしません」
「本当に反省した?」
「……はい」
背に腹はかえられぬのです。人間の身体に変わりはありません。
「明日には治ってるわ、きっとね」
……きっと。キットカットのようにきっとって言われた。
「そのギャグつまらないわ」
「え、なんで聞こえてるの?」
「私の一族はテレパシーが使えるの」
鎖につながった獣が立ち上がる。
「ふう、やっと声がだせる」
獣が喋ってる……これはもう夢なんだな。
「だから夢じゃないって」
「そう夢ではない、現実だ。そして自分に起きた
事を確かめるんだな」
ね、猫になった。
「ああ、何が原因でそうなったか考えるといい」
……あなたにもあなたの彼女にも悪い事いってごめんなさい。
愛してる人がどんな外見かなんて関係ないよね。
「さすが私のカレシ。ちゃんと私が言いたい事を言ってくる
いい男だわ」
「だが、この家にそう何泊もできないのも確かだ。
他の家に伺わせてもらおう」
あなた達の目的はなんなの?
「酸素欠乏症、宇宙空間に長い間滞在しすぎたのよ」
え、あなたたち宇宙からきたの?
「ああ、そうだ。我々はこの星の人間からすれば異星人、エイリアンだな」
……だから屋根がなかったんだ。
「ああ、私のスキルで屋根を一時的に収納した」
よかった、なんとかなるのね。
「今日だけはここに泊めてくれ」
……わかったわ。
「大丈夫よ、起きたら綺麗に元通りよ」
そうならいいんだけどね。
「見てみろ。今日もまた美しい月がでてる」
月は白く輝いていた。
その光を見てるうちにだんだん、眠くなって……。

ガバッと布団から勢いよく起こす。
「夢かぁ……ちゃんと手もあるし人間だよね。
屋根もあるし、特に問題なし。
だけどあの人たち、宇宙人だったよね。
これって、ものすごい怖い事なんじゃ」
そう考えると背中がなんとなく冷たくなってきた。
だからこそあの事が夢か自分の部屋を調べる。
「……やっぱり夢じゃない」
獣がいたあたりに見知らぬ体毛が落ちていた。

びちびち

天国、それは学校で先生の目が一切届かない場所であり、
真っ白いベッドとアルコールの匂いが漂うここを
表わしていた。
私は、数学の倉橋の授業を受けたくなくて仮病を使った。
どうせ、私は授業を受けても受けなくても成績は同じ、
テストも満点の顔パスなのだ。
じゃあじっくり寝るかなってベッドに横になり始めた時に
隣のベッドに誰かも寝始めた。
びちびち……という不穏な音を立てるシルエットの人。
……え? びちって音しなかった?
私はカーテンの向こうの誰かに耳を傾けた。
びちっびちびち。
間違いない、可笑しな音がする。
不安になり、シルエットの影に声をかけてみる。
「……あの。大丈夫ですか?」
恐る……恐る………声をかけてみる。
「あら、私? 大丈夫よ」
意外に軽快な声で帰ってきた。
声質も普通の女の子の声だ。
私はそれで肩の力ががくっと抜けた。
はぁ~だよねぇ。
「コケを飲みすぎたわ」
シルエットの向こうから笑い声が聞こえる。
……コケって言った?
「え!? コ、コケ?」
「そうなのよ、あまりにも新鮮なものだから
飲みすぎてしまって」
ど、どうしよう。これはツッコむべきなのか。
それはお茶なんじゃないですかって。
「あの……それってお茶の事じゃ」
「な、なんですって!」
いきなりカーテンが空き、金魚顔と目が合う。
や、やっぱり人間じゃ、ない……。
そ、逸らすな……自然に接するんだ、私。
「お茶……なんじゃないかなぁって」
「あ、そうだったのよ。お茶お茶、ほっほっほ」
……ほっほっほなんて最近の女の子言うかな。
っというかどう見ても金魚……だよね。
制服こそ学校のものだけど、顔はまんま金魚。
金魚顔ではなく金魚そのもの。
ヒレがめっちゃ動いてる。
金魚って水の中じゃないと生きられないんじゃ。
「いやー慣れないもの飲むんじゃないわね」
「ふ、普段は何飲むの?」
「それ聞いちゃう?」
私は恐る恐る首を縦に振る。
彼女の真っ黒い目が私を凝視する。
「わかるでしょ?」
「わ、わからないよ」
「いや本当は知ってるんでしょ?」
「し、知らないよ」
私は首を横に振る。
「ふーん」と言ったまま彼女は何かを考えているようだ。
というか口がパクパク動いてて正直キモい。
もう何をつっこんでいいのかもわからない。
「あ、そろそろ迎えが来たみたいね」
「え、迎え?」
窓から真っ白い光が差し込んだかと思うと
その金魚の女の子は消えてしまった。
それと同時に廊下からこちらに誰かが駆けてきて
扉を開けると、私の目の前のカーテンが勢いよく開いた。
親友の美紀だった。
「大変よ、溝口のやつが金魚鉢めがけてお茶こぼしたのよ」
「そ、それで?」
「そしたら、緑で凄い濁っちゃって、中が見えなくなったんだけど
中見たら何もいないのよ。金魚が確かにいたはずなのに……」

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